在宅で仕事をしていると、道具の話が尽きません。モニター、椅子、デスク、マイク、照明。調べれば調べるほど「これがあると変わる」という話が出てきます。
この記事では、私が実際に買ってほとんど使っていないものと、買わないままでも特に困らなかったものを正直に書きます。あわせて、逆に「要らないと思っていたのに、結果的に要った」ものも書きます。おすすめを並べる記事ではありません。買い物を外したときに何を間違えていたのか、その中身を書く記事です。
書いているのは、元・調理師で飲食の現場に10年いた人間です。そこからSNS運用代行のフリーランスとして独立して、いまは自宅で作業しています。営業が苦手で、その苦手を埋めるために自動化を作り始めた在宅ワーカーです。道具に関しても、たぶん平均より遠回りをしてきました。
先に結論。外したものに共通していたのは、道具の性能ではありませんでした
買ったのに使っていない道具を並べてみると、共通点がひとつありました。それは「その道具が悪かった」わけではないということです。性能が足りなかったとか、期待外れだったとか、そういう話ではありませんでした。
共通していたのは、自分が困っていることの正体を取り違えたまま買っていたことです。困っている場所と、道具が効く場所がずれていました。だから、どれだけ良いものを選んでも、使う場面が来ませんでした。
逆に、いま毎日使っているものは、たいてい「この作業のここが面倒だ」という具体的な不便が先にあって、それを埋めるために買ったものでした。順番が逆になっていたかどうか。振り返るとその差だけだったように思います。
なので、この記事の結論は「これを買うな」ではありません。買う前に、自分がいま何に困っているかを言葉にできているか。そこを確認したほうが、結果的に安く済むという話です。
買ったのに、ほとんど使っていないもの
いちばん分かりやすい失敗から書きます。マイクとオーディオインターフェイスです。
私が持っているのは、オーディオテクニカのAT2020というマイクと、同じくオーディオテクニカのAT-UMX3というオーディオインターフェイスです。どちらも評判の良い定番の機材で、モノとして悪いところはひとつもありません。
良い音で話せば伝わると思っていました
買った当時の私が考えていたのは、こういうことでした。オンラインで打ち合わせをする機会が増えるのだから、声がクリアなほうが印象が良いはずだ。聞き取りやすければ、話の中身もちゃんと届くはずだ。そう思っていました。
いま思うと、この考えの中に「では、いま何がうまくいっていないのか」という部分がまったく入っていません。うまくいっていない理由を確かめないまま、うまくいく条件のほうだけを想像して買っていました。
実際に困っていたのは、音ではありませんでした
私は初対面の相手とオンラインで話すと、人見知りと自信のなさが前面に出てしまいます。これは自分でも分かっています。正直に言えば、その時間が本当に嫌でした。金額を出すときも、自信がないので自分から下げてしまっていました。
提案資料を見てもらえたことはありました。けれど、そのあとの連絡は一切来ませんでした。こちらからリマインドする勇気がなくて、そのまま終わりました。
この一連のどこにも、音質が原因になっている場所がありません。声がこもっていたから断られたわけではなく、自分から金額を下げたのも、追いかけられなかったのも、マイクとは関係のないところで起きていました。
それに気づいてからは、マイクを出す気持ちがなくなりました。機材のせいではなく、機材で解ける問題ではなかったからです。マイク単体の話は別の記事にも書いたので繰り返しませんが、「必要だったのは別のものだった」というのが、いまの正直な結論です。
ちなみに、いまも捨ててはいません。将来的に録りものをする場面が来たら使うかもしれない、という気持ちで置いてあります。ただ、それは「買った理由」とは別の理由です。買った理由のほうは、はっきり外していました。
買わないままでも、困らなかったもの

次は、買っていないものの話です。こちらは「買わなくてよかった」というより、買わないまま今日まで来てしまって、特に不便がなかったという書き方が正確です。
デスクライト
在宅の作業環境の記事を読むと、かなりの確率でデスクライトが出てきます。私は置いていません。
置いていない理由は、単純に困っていないからです。私はモニターを4枚使っていて、正面にはだいたい常に明るい画面があります。手元で紙を読む作業が中心の人であれば話は変わると思いますが、私の作業はほとんど画面の中で完結します。手元が暗くて困った、という場面が来ませんでした。
ここで大事なのは、「デスクライトは不要です」と言っているわけではないということです。私が言えるのは「私の作業では出番が来ていない」までで、紙を扱う人や、暗い部屋で撮影をする人には必要なはずです。使っていない人間が、使っている人の使用感を語ることはできません。
昇降するタイプのデスク
デスクも自作したものを使っています。高さは固定です。立って作業できる昇降デスクは、気になってはいますが持っていません。
これも同じで、いまのところ「座りっぱなしがつらくて作業にならない」という場面が来ていません。椅子を替えたときに体の負担が軽くなった感覚があったので、そこで一段落してしまった、というのが実際のところです。
もし今後、座っている時間そのものがきつくなってきたら、そのときに検討すると思います。買うかどうかを、いま決めなくていいと考えるようにしました。困っていない状態で先回りして買ったものが、うちでは使われないまま置いてあるからです。
逆に、要らないと思っていたのに要ったもの
失敗の話ばかりでも偏るので、逆側も書きます。買う前は正直そこまで必要だと思っていなかったのに、使い始めたら戻れなくなったものです。
モニターの3枚目と4枚目
いまモニターは4枚使っています。内訳は、メインがMSIのG274QPF E2(製造2023年)、サブがASUSのVC239が2枚(製造2017年と2019年)、それとASUSのVG258(製造2021年)です。型番は、自分では把握していなかったのでパソコンの実機情報から調べました。
この4枚は一度に買い揃えたものではなく、必要になるたびに足していったものです。製造年がばらばらなのはそのためですが、製造年は購入時期そのものではないので、そこは分からないままにしておきます。
枚数を増やして良かったのは、それぞれのモニターに作業や確認画面を置いたまま固定できることです。いちいち画面を切り替える必要がなくなりました。あとは、ウィンドウをモニター間でドラッグして動かせるのが楽です。地味ですが、この2つが毎日効いています。
増やして困った点は、費用がかかることくらいでした。使い勝手の面での不満は出ていません。
正直、増やす前は「そこまで変わらないだろう」と思っていました。実際に変わったのは、作業そのものではなく作業と作業のあいだの動作でした。この差は、買う前には想像しにくいところだと思います。
椅子
椅子はSYALENを使っています。それまでは普通のデスクチェアでした。
替えてから、肩こりと腰痛が緩和されたような気がしています。ここは正直に書きますが、はっきり治ったとまでは言い切れません。同じ時期に他のことも変わっているので、椅子だけの効果だと断定はできません。ただ、椅子に対する不満はいまのところ出ていません。
マイクと椅子で何が違ったのかを考えると、椅子のほうには「座っていて体がしんどい」という具体的な不便が先にありました。マイクのほうには、それがありませんでした。差はそこだったのだと思います。
「いらなかった」の正体は、道具で別の問題を解こうとしたことでした

ここまで書いてきて、自分でもはっきりしたことがあります。私が道具で外すときは、たいてい道具では解けない問題を、道具で解こうとしているときでした。
マイクのときは、人と話すのが苦手だという問題を、機材で埋めようとしていました。埋まりませんでした。苦手なのは音ではなく、話す場そのものだったからです。
これは道具にかぎった話ではなくて、私は仕組みでも同じことをしています。手を動かす時間を減らしたくて自動化を作ったのに、結局そのつど自分の手を動かしてしまっている、ということが今もあります。作れば解決すると思ってしまうのは、買えば解決すると思ってしまうのと同じ形をしています。
買い物の失敗を「調べ方が足りなかった」で片づけていた時期もありました。でも、たぶん違います。調べる前の段階で、何を解こうとしているのかが決まっていなかったのだと思います。
もうひとつ、これは私の事情ですが、独立してから半年ほどは収入がありませんでした。そのあとの半年も一桁万円台でした。当時アルバイトをしながら食いつないでいた時期に買ったものもあります。使っていない機材を見ると、あのときの数万円は何だったのだろう、という気持ちにはなります。だからこそ、次に買うときは同じ外し方をしないようにしたいと思っています。
買う前に、自分に聞くようにした3つのこと
いま道具を買うかどうか迷ったとき、自分に聞くようにしていることが3つあります。難しいことではなく、頭の中でやると必ず飛ばしてしまうので、なるべく文字にして書くようにしています。
1. その作業を、いまはどうやっているか
買いたくなっている時点で、その作業は今も何らかの方法でやっているはずです。いまのやり方を先に書き出します。書けないなら、まだやったことがない作業ということになります。やったことがない作業のための道具は、いちばん外しやすいところです。私のマイクがまさにそれでした。
2. 困っているのは道具か、それ以外か
時間なのか、体なのか、気持ちなのか、相手との関係なのかを分けます。ここで「気持ち」や「相手との関係」に丸が付いたら、道具では動かない可能性が高いと考えるようにしました。私の場合、苦手意識のところに丸が付いているのに機材を買っていました。
3. 買ったあと、どこに置いて、いつ使うか
置き場所と、使うタイミングを具体的に言えるかどうかです。「打ち合わせのときに使う」ではなく「打ち合わせの前にここに出して、終わったらここに戻す」まで言えるか。ここが言えないものは、たいてい買ったあとで出す機会が来ませんでした。出すのが少しでも面倒だと、人は出さないのだと思います。
この3つを書いてもまだ欲しいなら、買っていいことにしています。むしろ書いているうちに「これは道具の問題じゃないな」と分かって、買わずに終わることのほうが増えました。
それでも、買って良かったと言えるもの

失敗の話が続いたので、いま毎日使っていて不満が出ていないものも書いておきます。
- モニター4枚。困った点は費用くらいで、使い勝手の不満はありません。
- 椅子(SYALEN)。不満は今のところ出ていません。
- キーボード、マウス、ヘッドセット(いずれもRazer)。BlackWidow V3、Basilisk V3、BlackShark V2 Proを使っていますが、基本的に問題なく使えていて、特に不満は出ていません。
- ネット回線(ビッグローブ光)。速度は250Mbpsから350Mbpsくらいで、こちらも不満はありません。
並べてみると、どれも毎日ずっと触っているものでした。一日のうち何時間も体が触れているものと、月に何回か出すかどうかのものでは、同じ金額でも意味が変わります。私が外したのは、後者のほうばかりでした。
ちなみに、この一覧の書き方も意識して変えました。以前は「これは最高です」と書きたくなっていたのですが、実際に言えるのは「不満が出ていない」までです。毎日使っていて何も気にならない、というのは十分に良い状態だと思いますが、それ以上を盛ると、さっきのマイクのような買い方を人にさせてしまいます。
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まとめ
買って使っていないものと、買わないままでも困らなかったものを書いてきました。整理すると、こうなります。
- 使っていないのは、マイクとオーディオインターフェイス。困っていたのは音ではなかったのが理由でした。
- 買っていないのは、デスクライトと昇降するデスク。いまの作業では出番が来ていません。ただし、必要な人には必要だと思います。
- 逆に効いたのは、モニターの増設と椅子。どちらも先に具体的な不便があったものでした。
- 外すときの原因は、道具の性能ではなく、解こうとしている問題を取り違えていたことでした。
道具の記事を読んでいると、どれも良さそうに見えてきます。実際、良いものが多いのだと思います。ただ、良いものかどうかと、自分に要るかどうかは別の話でした。私はそこを何度か取り違えて、いま使っていない機材が手元に残っています。
もし今、何か買おうか迷っているものがあるなら、その商品を調べる前に、その作業をいまどうやっているかを一度書き出してみてください。私はそれをやっていなかったせいで、必要のない場所にお金を置いてきました。書き出すだけならお金はかかりませんし、書いている途中で答えが出ることもあります。


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