在宅で仕事をするようになると、机まわりに買いたいものがいくらでも出てきます。モニター、椅子、デスク、キーボード、マウス、ヘッドセット、マイク、回線。全部そろえたほうがいいのは分かっていても、一度に買えるだけのお金が手元にないことのほうが多いと思います。
この記事では、そういうときに何から買うかをどう決めるかという話を書きます。特定の製品をすすめる記事ではありません。私自身が独立してから作業環境をそろえてきた中で、後から見て「この順番でよかった」と思えたものと、「これは後回しでよかった」と分かったものがあるので、その判断の中身を出します。
書いているのは、飲食の現場に10年いたあと、SNS運用代行のフリーランスとして独立した在宅ワーカーです。営業が苦手で、その苦手を埋めるために自動化を作りはじめたような人間なので、道具にも詳しいほうではありません。詳しくないなりに、どこを見て決めたかという話だと思って読んでいただければと思います。
結論|1日のうちで触っている時間が長いものから買う
先に結論を書きます。私が今から同じ状況に戻るとしたら、1日のうちでその道具に触れている時間が長い順に買います。値段の順でも、欲しい順でも、レビューの評価が高い順でもありません。
理由は単純で、触っている時間が長いものほど、良し悪しが自分の体と作業に返ってくるからです。座っている時間はほぼ作業時間そのものですし、モニターも作業中はずっと見ています。一方で、会議のときだけ使うもの、月に何度か使うものは、どれだけ性能が良くても、その良さが返ってくる時間が短い。
当たり前のことを書いているようですが、私はこれを事前に決めていませんでした。決めないまま買ったので、買ったのに使っていない道具が実際に残っています。その話を先に書きます。
私の環境の中で、実際に使われていないもの
いま使っている環境は、自作のデスクトップに、自作のデスク、椅子はSYALEN、モニターが4枚という構成です。周辺機器はキーボードがRazer BlackWidow V3、マウスがRazer Basilisk V3、ヘッドセットがRazer BlackShark V2 Proで、回線はビッグローブ光です。
このうち、キーボード・マウス・ヘッドセットの3点は基本的に問題なく使えていて、特に不満は出ていません。モニターも椅子も、日常的に使っています。
使っていないのはマイクです。オーディオテクニカのAT2020と、オーディオインターフェイスのAT-UMX3を持っているのですが、実際にはヘッドセットのマイクで用が足りてしまっていて、置いたままになっています。買ったときは「オンラインで話す機会が増えるだろうから」と思っていました。実際には、話す機会そのものが自分の想定ほど多くなかった、というだけの話です。
これは製品が悪いわけではまったくありません。私の側が、その道具を使う時間がどれくらいあるかを数えずに買ったというだけです。買ったときは前向きな気持ちでしたし、届いたときも嬉しかったのですが、しばらく経って机の上を見たときに、素直に「これは順番を間違えたな」と思いました。
なぜ「時間」を基準にしたのか|椅子で起きたこと

時間で決めるという考え方に行き着いたのは、椅子を替えたときの実感が大きいです。
椅子を替える前は、普通のデスクチェアを使っていました。SYALENに替えてから、肩こりと腰痛が緩和されたような気がしています。ただ、正直に書くと、はっきり治ったとまでは言い切れません。同じ時期に作業のやり方も変わっているので、椅子だけの効果として切り出すのは難しいです。今のところ椅子への不満は出ていない、というのが正確なところです。
それでも私が椅子を上のほうに置くのは、効果がはっきりしていたからではなく、座っている時間がいちばん長いからです。効果が「気がする」程度でも、それが作業時間の全部にかかっているなら、合計では小さくないはずだと考えました。
逆に言えば、効果がはっきり出る道具ほど良いとは限りません。効果がはっきりする道具は、たいてい「使った瞬間に分かる」種類のもので、それは使う時間が短くても分かるということでもあります。使う時間の長さと、効果の分かりやすさは別の話です。
モニターは「時間が長い」の典型だった
モニターも、触っている時間で言えば椅子と同じくらい長い道具です。私は今4枚使っていて、内訳はMSI G274QPF E2が1枚、ASUS VC239が2枚、ASUS VG258が1枚です。製造年はそれぞれ2023年、2017年と2019年、2021年でした。型番は自分では把握していなくて、パソコンの情報から取り出して知りました。
この製造年はばらけていますが、これは購入した順番の証拠にはなりません。中古で手に入れた可能性もありますし、まとめて買った可能性もあります。分からないことは分からないままにしておきます。
4枚にして良かったのは、それぞれのモニターに作業や確認画面を置いておけるので、いちいち画面を切り替えなくて済むことです。ウィンドウ間のドラッグアンドドロップが楽なのも、複数枚にしてよかった点でした。困った点は費用がかかることくらいで、使い勝手の面での不満はありません。
ここで大事なのは、「切り替えなくて済む」という利点が、作業している時間のあいだずっと効いているという点です。1回あたりの得は小さいのですが、回数が多い。時間が長いものを先に、というのはこういうことだと思っています。
お金が無い時期に、どう考えていたか
順番の話が重要になるのは、そもそも一度に買えないからです。私の場合、独立してからしばらくは本当にお金がありませんでした。
独立するためにスクールに入っていて、通ったのは動画編集のスクール、費用は約70万円、期間は6ヶ月でした。収入が無いまま費用だけが出ていく時期があって、そのあと独立してから半年くらいは無収入でした。さらにそのあとの半年くらいも、収入は一桁万円台です。その間はアルバイトをしながら食いつないでいました。
当時の単価も書いておきます。独立初期の編集案件は1本4,000円から10,000円くらいで、動画の尺によって金額が変わりました。コンサルは1本3,000円でした。この金額を見ると、道具ひとつがどれくらいの仕事量に相当するかが、かなり生々しく見えてきます。
この時期に私が考えていたのは、「その道具は、何時間の作業を支えてくれるのか」ということでした。作業時間を支えないものは、どれだけ欲しくても後回しにするしかない。実際に全部そう判断できていたかというと、マイクの件があるので正直できていなかったのですが、考え方としてはここに落ち着きました。
「効いたかどうか分からない」道具の扱い方

道具を買うときにいちばん困るのは、効果がはっきり測れないことだと思います。椅子の話でも書いたとおり、私も「緩和されたような気がする」以上のことは言えません。
それでも私は、この曖昧さを理由に判断を止めないようにしています。理由は、仕事のほうで似た経験をしたからです。引き継いだクライアントの案件をコンセプトから作り直したことがあって、それが最近になって伸びました。素直にうれしかったですし、クライアントも驚いていましたが、伸びるまで手応えは一切ありませんでした。やっている最中は、効いているのかどうか分からないままです。
この経験があるので、私は「反応がない期間」をすぐに失敗とは思わないようにしています。道具も同じで、替えた直後に劇的な変化がなくても、それだけで無駄だったとは判断しないようにしました。逆に、劇的な変化がなかったものを無理に「効いた」と言い切ることもしません。分からないものは分からないまま、不満が出ていないなら使い続ける、というくらいの扱いにしています。
順番を決めるときに、私が見ないことにしたもの
いくつか、あえて判断材料から外したものがあります。
- いま欲しい気持ちの強さ。買う前がいちばん欲しい気持ちが強いので、これを基準にすると順番が毎回入れ替わってしまいます。
- 「そのうち使うはず」という予定。マイクを買ったときの理由がまさにこれでした。今すでに使っている時間があるかどうかで見るようにしています。
- そろえたときの見た目。悪いことではないと思うのですが、私の場合これを優先すると、使う時間の短いものから買ってしまいます。
逆に、見るようにしているのは次の2つだけです。ひとつは、その道具に触れている時間が1日どれくらいあるか。もうひとつは、その道具が壊れたり無くなったりしたときに、仕事が止まるかどうかです。
後者は回線が分かりやすい例です。私はビッグローブ光を使っていて、速度は250Mbpsから350Mbpsくらい、特に不満はありません。ふだんは意識しない道具ですが、これが止まると仕事そのものが止まります。触っている時間で言えばゼロに近いのに、優先度は高い。時間の基準だけでは拾えないものがあるので、この2つ目を足しています。
いま同じ状況からやり直すなら

もし収入が不安定なところからもう一度そろえるとしたら、私は次の順で考えると思います。あくまで私の作業内容に対しての順番で、万人向けの正解ではありません。
- 仕事が止まるもの。パソコンと回線です。ここが欠けると、他が何であっても作業になりません。
- 座っている時間の全部にかかるもの。椅子です。効果の測りにくさはあっても、かかっている時間が長いので先に置きます。
- 見ている時間の全部にかかるもの。モニターです。ただし枚数は最初から4枚を目指す必要はなくて、自分の作業で本当に切り替えが発生しているかを見てから足すのでいいと思っています。
- 触っている時間が長い入力機器。キーボードとマウスです。私はRazerの2つを使っていて、不満は出ていません。
- 使う場面が限られるもの。マイクなどはここです。私はここを前に持ってきてしまって、結果として使わないまま置いています。
この順番の良いところは、途中で止まっても仕事が回ることだと思っています。上から順にそろえていけば、予算が尽きた時点でも作業はできる状態になります。逆に下から買っていくと、そろっているのに作業がしづらい、という状態になりがちです。
なお、製品の価格や仕様は2026年8月時点で私が見ている範囲の話です。買う前には最新の情報を公式で確認してください。
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まとめ
在宅ワークの道具を何から買うか迷ったときは、1日のうちで触っている時間が長いものから、そこに無くなったら仕事が止まるものを足して考える。私が実際にそろえてきて、後から納得できたのはこの2つの基準でした。
私はこれを事前に決めていなかったので、マイクのように買ったまま使っていない道具が残りました。金額としては痛い買い物でしたが、そのおかげで基準がはっきりしたところはあります。効果が「気がする」程度でも、かかっている時間が長ければ意味はあると思いますし、逆に性能が良くても使う時間が短ければ後回しでいい、というのが今の考えです。
もしこれから環境をそろえるなら、まずは今日1日、自分がどの道具に何時間触れていたかを思い返してみてください。順番は、たぶんそこに書いてあります。


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